ちょっと変わった不思議な竹取物語
海での失敗といえば もう一つありました
浜名湖で救助を求めるサインを発した漁船を助けようとした時のことでした
この時も駿河湾から出なくてはならないので 最初から気合いを入れて臨んだはずでしたが 海の難所と呼ばれている遠州灘で 舵を壊して転覆・遭難 直前の千石船と出会い
一旦は助けようとしてみたもののうまくゆかず でも両者ともに見捨てられないために 自分の身体を二つにして両方とも助けようとしたのですが
結局 浜名湖への到着は遅れて 漁師さんたちを一人も助けることができず
遠州灘の千石船も 二つ身になって半減したパワーでは 船と一緒に波に翻弄されているだけで 下手につかまっていると沈没させてしまうおそれも出てきたことから 「無事にどこかにたどり着いて!」と願いながら泣く泣く手を離してしまいました
この時の船の船頭が小栗重吉でした
その時のスルガザウルスの願いが届いたのか 何とか沈まずにはすみましたが なんと四百八十四日間も漂流し続け とうとうアメリカの西海岸付近でイギリスの商船ホーストン号に救助されました(世界最長の漂流記録です)
浜名湖の漁師さんたちの 救助を求めるサインを受け取りながら 最初のその人たちさえも救えなかったことを 非常に悲しんだスルガザウルスは このような悲しいことが何度も繰り返されないようにとの願いを込めて 自分の身体の一部を浜名湖にそっと残してきました
失敗ばかりではスルガザウルスに気の毒ですから 今度は私自身がスルガザウルスの存在を知って信頼するようにもなった スルガザウルスの成功体験についてお話ししましょう(昭和五十年頃のできごとです)
大井川の西側の静波海水浴場でした
台風の日にやってきた若夫婦が 海の家の階段の途中に赤ちゃんを入れた竹かごを置き 自分たちは波打ち際で遊んでいたところ 不意の大波に竹かごがさらわれ お父さんがそれに気づいて駆け寄っていったところ その次の波で赤ちゃんの入った竹かごがお父さんの腕の中に飛び込んできたのです
不思議なことに竹かごも赤ちゃんの衣服も全く濡れていませんでした