その日は、普段クラスで騒いでいる人も神妙な顔つきでいた。
高等部では、クラス名はキリストの聖地の名前でなく、アルファベットで、A、B、C、D、E、組と簡単な呼称になった。週に一時間は宗教の時間があり、担当のシスターがキリストの根本の教え「隣人愛」についてその世界観や他のイスラムや仏教も同じように「無償の愛」を説いていることを教えており、根本は同じであることを学んだ。
学校の敷地内にある礼拝堂では学校行事のある時は学年別に牧師の説教や讃美歌の合唱をして学生皆が心を一つにする機会があり、その日は朝からなんとなく緊張して普段クラスで騒いでいる人も神妙な顔つきでいる姿は傍から見ると滑稽な一面だった。美代子はピアノの演奏で歌う讃美歌はいつも心が洗われるような気持ちになり、大好きだった。
キリスト系の女子高に入学したが特に宗教に惹かれたわけではないので、洗礼は受けていない。でもキリストの教えの中で「神の愛は太陽のようにすべての人を照らす。神をそむいた罪人にも神の愛が注がれる」という一節がある。
美代子は平等の愛という教えは自分も共感を覚えるので好きな言葉として、時々暗唱することがある。両親に対する感謝や友達との友情関係そして先生たちの生徒を引き上げようとする努力にいつもありがとうという気持ちでいる。