『掛け合い漫才小説』より、『シャドー・ボクシングの漫才』
松...最近、車で走ってると、車道を歩いてるとんでもないやつらが仰山おるんで参るわ。
竹...そりゃ、歩道がないからやろ。
松...違うわな、立派な歩道を差し置いて、車道を我が物顔で歩くから頭にくるんや。
竹...そりゃシャドー・ボクシングしとるんやな。間違いない!!
松...車道でするかいな!?
竹...歩道でやるかいな!?
松...歩道でやったら、ホドー・ボクシング!!
竹...んなもんあるかいボケ!! 補導しちゃうぞ。
松...あちゃー。せめて逮捕して。大人だけに。
竹...頭の中身は子供のくせして良く云うわい。
松...ほっとけ!! しかし、シャドー・ボクシング云うたら、見えもしない相手をイメージしてボクシングするあれやな。
竹...ボクシングの練習の基本やな。
松...じゃ皆、見えない相手に備えてるんか!?
竹...いやいや。車は流石に見えるやろ、ふつう。
松...それが、どうも見えてないんやな。
竹...見えてないのか。
松...はたまた、そもそも、見てないか。
竹...スマホの画面以外はなんも見ませんってか。
松...そうそう、それやそれ。かつて、『下を向いて歩こう』って有名な歌がありました。
竹...あるかい!! んなもん。
松...えっ? 知らんの? 坂本十。
竹...一つ余計やろ。
松...坂本九やろ。知ってます。まかせなさい。
竹...わざと間違えんなボケ!!
松...バレたか。しかし、上を向いたところで、今の世の中、灰色の空しか見えませ ん。
竹...真っ暗闇でござんすね。
(続く)