ただ待つだけでは余りに能がない、新橋駅から徒歩で五~六分なのだから、駅ホームで間違いなく合流できるようにするのが第一だ。そのあとは・・・と、私の頭脳は高速回転を始めた。

そこで、なによりも、まずは、さぎりを落ち着かせてやらなければ、と考えた。

私…「焦らずとも良い。正確な時間を導くべし」

さぎり…「電車まちがえなかったら、13じ55」

(えっ? 「電車間違えなかったら」とは一体どういう意味だ? と不審に思いながらも考えた。遅刻は覚悟していたが、演奏開始五分前に新橋に到着とは流石に覚悟の域を超えていた。頭の中では、“あちゃー、参ったな~”と大声で叫んでいたが、その返信は絶対にダメだ。そこで、さぎりを落ち着かせるために、私は沈着冷静なウルトラ警備隊のキリヤマ隊長のごとくに、言うなれば、全く以(もっ)て当たり前のことに過ぎないように、一言こう返した。)

私…「わかった」

さぎり…「ごめんちゃい」と、冷や汗顔の顔文字。

私…「しゃあない」またも、お気に入りの大阪弁。

さぎり…ひこうき ひこうき ろけっと ろけっと と、空を高速で移動する飛行隊の絵文字が並ぶ。彼女も必死の思いをしているのだ。