それから二週間ほどして、自殺者のニュースがメディアを騒がせた。自殺した三人のうち、一人はチップマンクの社員だった。岳也はなんとなく気になり、なぜその社員が自殺したのか調べてみたが、結局分からなかった。警察が分からないことを、岳也が分かるはずもない。
ボトルキャップ回収箱を見つけてから、気が付いたらキャップを集めるようになっていた。ある程度たまったら、何かのついでに持っていく。ある日、「ご報告」と書かれた紙がカゴに留められているのを見つけた。
「ご報告
回収結果を下記の通りご報告申しあげます。
納入数量 上期四、一トン 下期四、五六トン
売上金 上期四〇、一六五円 下期四四、八六五円
すべてそっくり『世界の子どもにワクチンを』日本委員会に寄付いたしました。四、二五一人の子どもたちにワクチンを送ることができました。ご協力、ありがとうございます」
四トンとは凄いな、と岳也は思った。どれほどのキャップが集まれば、トンという重さになるのだろう。想像がつかない。
自分の飲んだペットボトルのキャップも確実にこの中に含まれている。世界は確かに複雑に絡み合い、つながっている。
なにげなくしていたことが、思いもよらない結果の一因になっているかもしれないというのは頭では分かる。だがやはり岳也は、自分がどこかにつながっているという実感がどうしてもつかめないのだった。