「嫌だったらやめてもいいんだよ? やりたい人なんて他にいくらでもいるんだから」
「いや、別にそういうわけじゃないんだけど……」
ごにょごにょと口の中でごまかす。始めたことを途中でやめるのは、岳也の主義に反することだ。
「……いや、なんかさ、部品工場を連想しちゃって」
「部品工場?」
拓未が素っ頓狂な声をあげる。
「何それ」
「うん、まあたとえばなんだけど、大きな兵器を実はこっそり作ってる工場があるとする。でもそこで働いてる人達は、自分達が何を作ってるのか何も知らない、みたいな」
何それ、と再び拓未は言った後、少し考えるような顔になった。
「別にさ、」
おもむろに口を開くと拓未は言った。
「工場で働いてる人は、実は何を作ってるかなんて知る必要はないんじゃない? いや、むしろ知っちゃ駄目でしょ」
「え、でも知りたくない?」
「全然」
拓未は即答した。
「俺だったらそんなの知りたくない。もしやばいものを作ってるんだとしたら、なおさら知りたくない」
きっぱりと言われて岳也は言葉に詰まってしまった。それでこの話はおしまいになった。