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14 快楽主義からアタラクシア(不動の心)へ

時代状況が非常に似ています。こうした明らかに困難な状況で、すがすがしく生き抜いたマルクス・アウレリウスの姿は、今日の私たちに大きな感動を与えてくれます。

全文を紹介するわけにはいきませんが、自省録の中に、次のような一節があります。

「我々の内なる主が自然に従っている際には、〔できうるかぎり、〕許されるかぎり、出来事にたいしてつねにたやすく適応しうるような態度を取るものである。なぜならば、彼は特にこれという一定の素材を好むわけではなく、その目的に向かって、ある制約の下に前進する。そしていかなる障碍物にぶつかろうともこれを自分の素材となしてしまう。」(出典:「マルクス・アウレーリウス自省録」岩波文庫)

「いかなる障碍物にぶつかろうともこれを自分の素材となしてしまう」こうした態度を、ギリシャの哲学者は、アタラクシア(心の平静・不動の状態)と呼びました。楽しいときは素直に喜び、辛いときはその事実をありのまま受け入れ、どんな制約、不運が目の前にあっても、心を動かさず、一人の人間として正しく生きる。

これからの日本、日本人の前には、よいことも悪いこともきっとたくさんやってきます。よいことだけではありません、悪いこと、悲しいこともたくさんやってきます。

アタラクシアを精神の基本としながら、どんな状況があっても、全力で生き抜く。日本でも快楽主義が終焉を迎えたようです。

15 孤独から連帯へ

図は、一人あたりGDPと幸福度の関係をあらわしています。

X軸がGDP、Y軸が幸福度です。国が豊かになればなるほど幸福度は上昇していきます。

しかし、その傾斜はゆるやかです。日本は〇で囲んだ位置にあります。

日本、ドイツ、フランス、イギリスは豊かさにおいてはおおよそ同じ水準にあります。しかし、幸福度では日本が最も低い位置にあります。

[図]幸福度とGDPの関係
出典:「幸福度とGDPの関係」(WELL BEING3.0カンファレンス2019年4月 Forbes)をもとに作成

さて、もっと広く世界に目を向けてみましょう。

日本よりはるかにGDPが低い国で、日本より幸福度が高い国があります。メキシコ、ヴェネズエラ、アルゼンチン、チリ、コロンビア、エルサルバドルです。

中南米の人たちの幸福度は高いようです。アジアでは、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどです。ベトナム、インドネシアの人たちはなぜ日本人より幸福度が高いのでしょうか。