八月二十一日(月)入院し、翌日が手術だった。入院して、S先生に呼ばれ、エコーを受けた。ゼリー状のものを塗られ、両胸のあちこちを何度もこすられた。勝手に感じ、乳首が立ち、恥ずかしく悲しかった。
「マーキングしますね」と言われ、S先生は胸にマジックで幾つか丸印を書いた。寝間着の襟を合わせ、身仕舞いをただし、澄世は部屋に戻った。
誰にも見せず、触れられた事もないまま、明日手術をする自分のお乳に、澄世は「ごめんね……」と言った。そして、その晩、オンオンと泣いた。
手術は、S先生が切って乳腺を摘出し、T先生がシリコンのインプラントを入れて縫うという、同時再建手術だった。手術は無事成功した。
麻酔から目覚めると、両胸に重い痛みを感じたが、見ると胸のふくらみがあったので、乳房の喪失感はなかった。術後すぐは、乳首が真っ黒になっており心配したが、ステロイド剤のリンデロンを毎日塗ってもらっていたら、二週間後にシャワーをした時、ビラリと一皮剥け、綺麗なピンク色の乳首が顔を出した。
その日、S先生から乳腺の病理結果を聞かされ、非浸潤で乳管から癌は出ていなかったと言われた。