そこで、解剖学の入門と専門書との橋渡しをするものを目指して、紆余曲折の末、世に送り出すことになったのがこの作品です。解剖を進めることによって、明らかになってくる人体構造の緻密さ神秘さを、文章にて出来るだけお伝えしようと試みたものです。

写真・画像の掲載は倫理的に問題があり、文章に託してなるべくわかりやすく表現するよう努めたつもりですが、本来、解剖学実習は見て触って学習するものです。文章、言葉だけで描写、叙述するのに限界があるのは事実です。分かりにくいところ興味のない専門用語は、飛ばして次へと読み進めてください。

あるいは解剖のなるべく詳しい図譜か、可能ならインターネット上に参考となる画像も多いため、それらを参照されると理解と興味が増すでしょう。特にインターネットに関しては、イラストの使用を断念するほど充実していて、知らない用語など次々と検索していただきたいのですが、面倒と感じる方には、これだけは参照をお勧めしたいと筆者が判断した単語や箇所に(*)という印、または検索キーワード例を記載して入れています。ぜひご活用なさってください。

なお検索の折には、専門用語の場合に当用漢字にない文字もあると思いますが、文字は正確に記入し、“*図”などと検索して、いくつかの図の中から本文の説明に合うと思うものを探してみてください。ただし、怪しげな情報にはくれぐれも注意してください。最終的には解剖学の図譜などで確認してください。

当初は解剖学実習の様子を淡々と描いていこうと思っていましたが、医学部生活の実情の一端もお伝えできれば、と見聞きしたことや伝え聞いたことを主体に、一部現実に有り得そうだなという創作も加えています。将来医学部進学を考えている方の参考の一端にもなればと思います。

読者の皆様御自身が“僕”あるいは“わたし”になったつもりで参加、経験してみてください。