セットリストNo.2(第二章)
12 Freakshow On The Dance Floor–Bar-Kays
「お客様、Ys BAY SIDE CLUBへようこそ」
2人が、深夜の海にハマリすぎていたのか、ここへ来てからどのくらいの時間が経ったのか、解らなくなりかけていた頃。背後から、そう声をかけられ2人は、ゆっくりと振り返った。
声をかけたのはベイサイドクラブのエントランスポジションスタッフ。彼は、翔一の顔を見て、
「水嶋さん! ですよね。お久しぶりです。お元気でしたか? いらっしゃいませ」
彼は、翔一のことを知っていた。半年ほど前、ダンスイベントのベイサイドクラブナイトに、DJとして呼ばれ、1週間この場所へ仕事に来たことがあった。
その当時からのスタッフが、まだ何人か残っている。彼は、その一人。ゲストDJとして来ていた1週間、勝手のわからない翔一の世話を、こまごまとサポートしてくれたのは彼だ。
このお店は、あまりにも広いハコで、一部吹き抜けの2階構造にもなっていて、イベントプロデュース兼DJとして招かれた翔一は、多忙だった。2階からさらに垂直ハシゴをよじ上ると、そこには、ステージをピンでぬくスポットライトが備え付けてある。
ライティング・オペレーターも、彼の仕事の一部になっていたため、それらの場所に案内されたり、休憩や食事をとる場所を教えてくれたりした。翔一にすれば、結構お世話になったという思いのあるスタッフだった。
「本当に、お久しぶりですねどうですか? 六本木のほうは」
彼は、翔一が今どこでDJをやっているか知っているが、六本木の店に、顔を出したことはまだない。
「相変わらず、六本木はゴチャゴチャしてるよ、たまに横浜の環境が恋しいってなって思うよ。六本木も好きだけど横浜も、いいよね」
DJブースのすぐそばに2人の席がセットされ、スタッフが先に立ち案内する。