そう言われると何も言えなかった。何かあっても困るのはみどりより優人の方だし。

「……分かったよ、確かに引き止める権利もないな、俺には。じゃああと半月で終わりか。よし、来いよ」

優人はみどりの腕を取ってベッドに引き込んだ。

「俺のことを忘れられなくしてやる」

優人に組み敷かれながら、みどりは口の端で笑ってみせた。

「どうかしら」

その後静子とは珍しくまる一週間会わなかった。帰れと手を振り払われたあの時から、ラインのやり取りはしていたが、何となく足がアパートに向かなかったし、静子も会いたいとは言わなかった。

約束していた鎌倉デートも延期した。その代わり毎日のようにみどりと会っていたのだ。最後と思うと惜しくなったか、別にイヤになったわけじゃないのに別れるなんて、どうも納得できなかった。そりゃあ酒の勢いで始まり、好きになったってわけでもないが……。

連日みどりを抱き続けて、これまではなかった恋愛感情のようなものが芽生えたような気さえしていた。しかし今夜は金曜、みどりは永村と連れ立って例のサックスを聴きに行ったのだ。優人は仕事が終わったら自分も寄るべきか迷っていた。

しかし遅番が終わってからだとあまり時間もないし……。何より静子とみどりを同じ空間で並べて見たくはなかった。気まずすぎる。しかし気にはなる……。

送別会のことも、その下見を兼ねて永村がサックスを気に入ったから同僚と行くことも、一応ラインで静子に伝えてはいた。静子からの返信は、河井とやらの演奏を誉めるに留まった。

仕事が終わって、結局レストランには寄らずに静子のアパートへ行くと、ちょうど静子も帰宅したところで、鍵を手にしていた。優人を見た静子は顔に戸惑いを浮かべている。

「お疲れ、今日はラストじゃなかったんだ?」

努めていつも通りに話しかけた。

「うん、ちょっと……」