「あ、そういやあのCM、まだ放送されたりしてんの?」

「やめてよ、その話。あれ黒歴史だから!」

「あっ! CMの子!」

「えっ!」

思わず、店員さんと満里奈の会話に入ってしまった。既視感は、なんか見覚えがあった気がしたのは、美穂ちゃんに似てたからではなかった。単純に僕は満里奈を見たことがあったのだ。

テレビで流れてきたなにかの飲料水のCM。そのCMでセクシーな衣装を着て、踊っていた二人組の女の子の一人。それが満里奈だった。

一度村崎の家でそのCMを見たとき、話題に出したこともある。この女の子、可愛いよなって。その女の子がたまたま隣にいるのだ。

「僕、知ってます、そのCM。え、芸能人の方ですか?」

「そんなんじゃないですよ。エキストラみたいなもんなんで」

「え、でも。あれ全国で放送されてるCMですよね?なんで今宮崎に?」

「ああ、あれ東京でダンサーやってたときに撮ったやつなんで。もう辞めて、こっち戻ってきたんで。宮崎、地元なんですよ」

「そうなんですか。でも凄いですね。東京でダンサーやってCMまで出てて」

「はあ、ありがとうございます……」

そこからは正直なにを話したか覚えてない。とにかくテンションが上がってたし、あのときテレビでいたあの子が東京から宮崎に戻って、たまたま僕の隣に座ったことに運命的なものを感じていた。

YouTubeで見たナンパ師が「女の子と喋るときは間を開けるな。女の子が不安になるから。とにかく喋り続けろ」という言葉を信じて、僕はとりあえず喋り続けた。話の中で自分のアピールもいっぱいした。

自分はこんな感じだけど、国立大学に通っていること、おばあちゃんっ子なこと、そして今考えればただマイナスにしかならないだろうが、新歓コンパの代表に一年で上り詰めたこと。仲間内で爆笑を取った話もいっぱいした。

その結果、僕がちょっとトイレに行ってる間に、満里奈は会計を済ませて帰っていた。せめて連絡先だけでも交換しようと追いかけようとしたが、店員さんが止めてきた。

「悪いけど、あの子嫌がってたぞ」

これが僕と満里奈の初めての出会いだった。自信を失くした僕の苦い思い出だ。

次回更新は5月6日(水)、21時の予定です。

 

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「あの……昔バーで会いましたよね?」二度目の出会いは突然に訪れる。はじめはプライベートな会話など一切なかったが......

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