沢渡はテーブルに持っていたファイルと途中で買ってきた缶コーヒー2本を置いた。

沢渡は改めて名前と階級を言い、空閑に挨拶をした。

「本庁捜査一課の空閑だ」

缶コーヒーを受け取りながらぶっきらぼうに言った。

時間はすでに日を跨いでいた。機嫌が良いはずはない。

そんな態度に応えるように沢渡はさっそくファイルを広げ、死体発見現場の状況から説明を始めた。

「死体発見場所は歌舞伎町ゲイ専門ラブホ『XOX』801号室のバスルーム。発見したのはホテルパート従業員の山田和子45歳。部屋清掃のため午前10時30分過ぎマスターキーで解錠し入室、バスルームに入ったところで被害者を発見。すぐに支配人・高橋悦郎62歳に連絡。支配人は現状を確認し、同日10時50分110番通報」

沢渡は、ファイルを見ながら慎重に言葉を連ねた。

「被害者は男性。血液型A型、年齢20代後半、やせ形、身長175cmくらい。細面の端整な顔立ち、性器に傷などはなく、精液などの付着物の検出を鑑識で確認中」

沢渡はここまで一気に読み上げた。缶コーヒーを飲んで一息入れると、ファイルから被害者の写真を3枚ほど空閑の前に差し出した。

空閑は、一枚一枚凝視し画像を頭に叩き込んでいるようだった。

沢渡は続けた。

「下着を含む衣類の他、スマートフォン、財布、免許証など個人を特定できるモノは現場にはありませんでした。死因ですが、鑑識官の乾(いぬい)主任の見解だと『浴槽の湯に顔ごと沈められ窒息したと考えられる』とのことです。『死後6から7時間経過と見られ、死因は今のところ窒息死が濃厚と思われ、正確には司法解剖の結果で判断するとともに身体内の残留物等の確認を行う』とのことです」

「空っぽの浴槽は、殺した後に湯を抜いたのか?」

空閑は、確認するように聞いた。

「……だと思われます」

沢渡は軽く頷き、空閑を見た。

「被害者のチェックイン時間は、何時だ」

空閑は被害者の歪んだ顔の写真を見ながら聞いた。