あげくのはてに、バックポジションランプを、そこここで燈している。そんなことは日頃からよくある通常のロケーションだし、『ここは六本木なんだから仕方ないよな。ここでは、これが普通だよ。って割り切れれば、なんの影響もないこと。ストレスを感じたことさえないよ』と思う。

香子を隣に乗せたX1/9は、外苑東通りを左に折れて、六本木通りを渋谷方面に向かう。500メートルも走ると、立体交差で外苑西通りとクロスする。

そこは、霞町の交差点。最近では霞町じゃなくて、西麻布と呼ばれるようになった場所。角にはホプキンズというアイスクリームショップがある。

『この時間のこの場所は、しずかなもんだね。あっち側とはずいぶん違うけど、このへんの雰囲気も、好きだなぁ、なんか落ち着いていてさ。さがしてみれば、あるんだよ愉しめるダンスフロアーがいくつもね』

六本木で一番賑わう地点に、アモンドはあるが、この霞町の交差点にもある。霞町のアモンド前に、フィアットを止め、車から降りた翔一は、彼女側にまわってドアを開ける。

香子は綺麗な足を、すっとのばしてシートから立ち上がった。キーロックしながら、「ちょっと、よりみち」翔一が言った。

香子と手をつないで、横断歩道を渡っていく、車を止めたアモンドから、道路を挟んだ向こう側、そこで左を向くとすこーしだけのぼり坂になっている。交差点から、30メートルくらい歩いていくと、変わった雰囲気のお店がある。

ここらにある別の風景から、一線を画すイメージを持つ場所。インパクトはかなり強め。小学生の頃から、この霞町界隈で遊んでいた翔一にとっては、当時の懐かしい雰囲気を感じつつ、このハデなお店にちょくちょく寄っている。

ここ、なんの店? って訊かれたら日本風に言うところの雑貨屋と玩具屋を、たして2で割ったようなっていう感じになるんじゃないの? 実際に行ってみると、意外に楽しかったりするお店。

最近、なじんできたバラエティーショップ。このお店は、その元祖だ。

無造作に打ち付けられた看板に、この店の名前がペイントしてある。『WHOPY』って文字が、原色で抜かれている。

翔一は今まで、このお店の名前を、店の人に訊いたことはない。たぶん、『フーピー』だろうと理解して、そう呼んでいる。