そんな、切れた指が生える。ニョキニョキと再生するか、最新の医療手術で元通りになっている。傷も腫れも消え、自由に曲がり、地面を蹴る。ものが当たっても痛みはない。何だよ、結構簡単だったなと、肩を叩かれて笑う。そうだ、それは簡単だった。もうこれ以上、苦しむこともない。
しかし再生した指はすぐに腫れ始める。赤黒く膨れ、はちきれそうな皮膚はパラフィンのように薄く光りながらブヨブヨと膿をはらみ、膿は骨や筋を溶かす。
関節を折った瞬間にパラフィンが裂け、勢い良く飛び出た血混じりの膿が口に飛び込む。苦みと腐臭が口一杯に広がる。曲げた指は激痛を伴って朽ち、もげて元通り。
戻った苦痛に歯を軋ませ頑なな瞼をこじ開け布団を剥ぐ。はあはあと、寝ていたのに荒い息に肩が動く。布団から露出した裸に冷気が触れ、肩をすくめ震える。何だ? どこだここは? 凍てついた雪山の氷壁か? 早く脱出しなくては。いや、でも何で冬山に裸でいるんだ?
ウェアはどこだ? と辺りを見回すと薄暗の中で饐(す)えくたびれた布団が見える。自分は布団の上にいる。そうだ、ここは自宅の部屋のはずだと、寝ぼけからだんだんと覚醒していくと、状況も判明していく。
そうか、夢か、と気づいた途端、緊張が一気に緩み、大きく息を吐く。大量の寝汗がこめかみから首筋に流れ冷気が裸を舐める。