ワンルームマンションからは北北東の方向にある神社へは路面電車で行くのが一番だ。二十分足らずで神社の最寄り駅に到着した。鳥居を幾つも潜り、階段を上がって拝殿に辿り着いた。身の引き締まる思いで、二礼二拍手し、「無事にお勤めを終えることができますように」と祈願し、最後に深々と一礼した。

『一の鳥居付近に「男石」、四の鳥居付近に「女石」、拝殿前に「両性合体石」が参道の敷石に埋め込まれている。男性は「女石」、女性は「男石」を踏んだ後、最後に拝殿前に埋め込まれている両性が合体した石を踏んで厳かに参拝すると縁結びの願い事が叶う』

振り返って帰路に就こうとした時、視線の先に看板が目に入ってきた。結婚して既に二十二年、二人の子供に恵まれた拓也は「縁結びなんて俺はもう対象外だな……」と呟いたが、少しだけ胸が高鳴った。この目で確認せずにはいられなかった。

早歩きで一番下まで階段を降りていった。一の鳥居の手前に円形の石が埋められている。亀頭? 睾丸? よく分からないがペニスが円で表現されているのだろう。四の鳥居に来ると六角形の石の中心部分が穴のような形になっていて僅かに亀裂が入っている。ヴァギナであることがすぐに分かった。膣や陰核らしきものが見える。

最終ゴールの拝殿前には、四角形の石の中に円が描かれていた。四角い石に円柱の石が寸分違わず埋め込まれているように見える。ヴァギナにペニスが挿入され完全に一つになっている。

このようなオブジェに普段、中々お目にかかることがない。ふと思いついた神社への訪問であったが、なぜか、幸先の良いスタートが切れたかもしれない、と、穏やかな気持ちになりゆっくりと駅に向かった。

五分ほどで電車がやって来た。空席は十分にあったが、立った姿勢のままこれから過ごすことになる街の風景を楽しみながら帰路に就いた。

勤務初日は、東京のオフィスから送った荷物の整理やら何やらで、ほとんど仕事にならず一日が過ぎた。腕時計の針が午後五時十四分を指した頃、早々に切り上げ、十分ほど歩いて到着するマンションに急いだ。

荷解きがまだ終わってない段ボール箱を減らさなければ。早くゆとりのある日常生活ができるようにと、相変わらず蒸し暑いワンルームの部屋で片付けを始めた。

 

👉『朧月』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「いい?」と聞かれ、抵抗なく頷いた。優しく服を脱がされてキスを交わす。髪を撫でられ、身体を撫でられ下着姿にされた。そして…

【注目記事】あの人は私を磔にして喜んでいた。私もそれをされて喜んでいた。初めて体を滅茶苦茶にされたときのように、体の奥底がさっきよりも熱くなった。