第2章 人生における五つの重要事実と心の法則
1 人生における五つの重要事実
(1)人生の経糸と緯糸としての法則
幸せな人生を送るための前提として、まず人生というドラマを織りなす経糸(たていと)(縦軸)と緯糸(よこいと)(横軸)は、どのような法則から構成されているのであろうか。
これに関して、例えば、稲盛和夫は、図1のように、「人生を構成する要素としてまず運命があります。これが人生を貫く縦軸として存在し、人生は、運命という縦軸に沿って流れています。同時に、人生にはもう一つの要素が存在し、運命という縦軸に対して横軸を構成しています。それが『因果応報(いんがおうほう)の法則』です。
因果応報の法則とは、善いことをすれば、善い結果が生じ、悪いことをすれば悪い結果が生まれる。善因(ぜんいん)は善果(ぜんか)を生み、悪因(あくいん)は悪果(あくか)を生むという法則のことです(稲森和夫 2014年『成功の要諦』136頁 以下書籍名略)」と述べている。
このように、縦軸が「運命」であり、横軸が「因果応報の法則」であるとしている。この場合、前者の運命に関して、まず「地球レベルという大きな運命のうねりがあり、次に国家、地方の運命があり、さらにその上を個々人の運命が漂い流れています(142頁)」としている。
そして、両者の関係に関して、「実は因果応報の法則のほうが、少し力が強いのです。……運命は因果応報の法則に作用され、変わってくるものなのです(142-143頁)」とし、運命は変えられると述べている。
この場合、人生の縦軸と横軸に関する法則というように、両者を法則で統一してみると、図2のように、経糸 (縦軸)に関する法則が、全体として物事を関係的に観(み)る「縁起(えんぎ)の法(※注1)」である。
※注1
存在に関する法則としての「縁起の法」とは、すべてのものは、(因と)縁(の相互関係)によって生じ、(因と)縁(の相互関係)によって滅する、というものである。それゆえ、これは、「甲があるから乙がある。甲がなければ乙はない、という法則」であり、例えば、両親があるから自分があり、両親がなければ、自分はない、というものである。すなわち、存在するものは、すべて相互依存関係にあるという真理である。この関係について自分は、例えば、空間的な縁起の観点からは、他の人、動植物、地域、国家、地球、宇宙と関係づけられ、他方、時間的な縁起の観点からは、両親、その先祖、哺乳類、魚類、単細胞生物などに遡ることによって無限の過去と関係づけることができ、これら全てが環境や運命となり、現在の自己に影響を及ぼしている。