「以前福島に住んでいた、主人の遠縁にあたる人で、両親はすでに無く独り身なの。高校を卒業した後、山形家に家政婦として入ったの。また勉強家で夜間の大学にも仕事と両立させながら卒業した、芯の強い人なんだと聞いている。普段の生活を拝見していると異性に触れる機会もないよね。一番身近な異性は美月さんが介助している主人だけになる」
「確か、ご主人より三つぐらい年上でしょう」
「そう、主人とは姉弟の関係みたいだよ、と言って異性を感じたことが無いと私の前では言っていた。でも子供じゃないから毎日接していると情を感じるわね。だから最初入浴の介助を美月さんがやっていると聞いた時、えっ? 本当?と思った。あなたたちだってそう思うでしょう?」
「そうねえ、よく家政婦さんで、年取った人が介護センターなどで行っているでしょう。あれは職業として割り切れるけど、年齢が接近している男女がお風呂場での入浴介助にはちょっと抵抗があるわね。美代子は何にも感じないの?」
「どんな?」
「例えば、美月さんに対して嫉妬とか」
「それが無いのが不思議で、私は愛情が薄いのかもね」
と少し首をかしげた。
「貴女は自由と趣味に結婚したのよ」
「私もそう思う」
と結衣が花帆に同調した。先ほど注文した昼食が来た。店員さんが後ほど飲み物を持ってきますからと言い、スパゲッティ、卵サンド、アメリカンクラブハウスサンドをテーブルのセンターに置いた。
「どれも美味しそう、アメリカンクラブハウスサンドは美味しいから一つ食べてみて」
と言い結衣と花帆に勧めた。花帆が口に含み、
「トーストの味がいいね、焼き具合が最高」
結衣も食レポよろしく、
「挟んであるビーフの味が、いいお肉という味だわ。良かったら卵サンドも食べてみて」
「ありがとう、いただくわ」