美代子は場の雰囲気を変えようと思い、話題を二人の方へ振った。

「花帆と結衣は子供がいるから、家族と言えるよね」

「何、それ」と花帆がけげんそうな顔付きをした。

「普通、夫婦二人だけだと家族とは言わないでしょう。私なんか同居人という関係かな」

「そうね、子供がいると子育てから学校のことが話題になり夫婦二人の会話は少なくなるよね。子供の話題が中心ということもあるからバランスが保たれている。結衣の所もそうでしょう」

「同感」と首を縦に振った。

美代子は「我が家は子供がいないから共通の話題が少ないの。主人は自分の事務所でパソコンにひたすら向かって一人仕事だし、家の中の事は家政婦さんがやるでしょう。だから私は一体何をすればいいの、という感じでストレスが溜まるのよ」

「外から見ると何て優雅な生活、と思うわね。美代子も悩みがあるのね」と花帆は他人事のように言った。

「花帆はご主人とどんな話をしているの?」

「うちは取り留めのない話題ね。野球がある時は主人が応援しているチームの結果や応援している選手の成績なんかが中心ね。私は野球には興味がないから、適当に相槌を打って主人の気分を害さないようにするだけ。私からは子供のその日の出来事位が中心になる。男の子二人だから家にいる時は賑やかなの。結衣の所は女の子だから静かでしょう?」

「そうね、習い事させているから結構忙しいよ。花帆もスポーツクラブに入れるといっていたよね、何かやらせておいた方が安心ね」