家に帰って、ゆっくりお風呂に入れた。手はビニールで保護して綺麗に洗ってあげた。
「ご褒美だ」
と甘えている。疲れたのでしょう。ベッドに入ったらすぐ寝入った。週末は、お出かけせずに家に居てのんびり過ごした。
「ここが痛い、背中が痛い、胸が痛い、マッサージして」
と。全身を触ってと甘えている。全身打撲で少しぐったりしているな。少し辛そう。
今井さん会社編
月曜日、元気で、
「行ってきます」
と出勤。
「おはよう」
「社長! 手のケガどうしたんですか? 奥さんとケンカして負けたんですか?」
「バカな事言っているんじゃないよ。名誉の負傷だ。アハハハハ」
「午前中に山川頭取が来社予定」
打合せ中、小さな男の子の声がした。
「こんにちは。僕、吉岡快君です」
「お客様のようですので、失礼いたします」
山川頭取、席を立った。
「誰だろう」
事務所のドアを開けると快君だ。
「おおー快君、どうした?」
「おじいちゃまとパパとお礼に来ました」
と。お父様は見たことある方だった。有名な吉岡ホールディングスの社長だ。
「お約束の連絡もしないで申し訳ありません。どうしてもお礼が言いたくて伺いました」
あっ! おじい様は吉岡ホールディングスの会長。
「先週は本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げていいか分かりません」
「とんでもありません。当たり前の事をしただけです、でもそれがきっかけで小さなお友達が出来ました。ね、快君」
「うん、今井のおじちゃん大好きだよ」
と抱きついている。
「快はすごい人見知りなので珍しいです。今井さんに直ぐ抱きつくなんて初めてですよ。僕の友人に一人だけ居るくらいです」
「父も僕も、驚いています」
「さっきのおじちゃん、お名前は?」
「和田のおじちゃんだよ」
「和田のおじちゃんと今井のおじちゃん、とても仲良しでしょう。同じ色をしている」
「すごく仲良しだよ。僕の方が若くてカッコイイけどね」
和田専務。
「何バカな事を言っている。僕がカッコイイだろう。快君」
「僕は答えられないよ」
皆大笑い。
「パパ、今井のおじちゃんの会社、とても空気がきれいだよ。僕、大人になったらここで働きたい。心がきれいになるよ」
吉岡社長びっくりしている。
「快、今井さんにお話があるでしょう」
「そうだった。ケガしたお手々さん」
そっと左腕をつかみ、
「お手々さん、僕を助けるために、ケガをしちゃったね。痛かったね。ごめんね。本当にありがとうね」
と。頬をそっとケガした腕に押し当てて目を閉じている。
「早く治りますように」