遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

そんなある日の夕方、突然ママが「ちょっと話があるからここに座って」とダイニングテーブルに向かい合って座った。

真剣な話だと思わず、冗談ばかり言って茶化しながら座る私。

いつの間にかパパは別の部屋に姿を消していた。

ママが一枚の書類を見せてくれた。

戸籍謄本だった。

「あんたの本当のお母さんは、あたしよ」とママは言った。

初めて見る戸籍謄本。

最初、ママが言ってる意味がわからなかった。

「本当のお母さんって? どういう事? 新田のお母さんは?」と聞くと「新田のお父さんとお母さんはあんたの本当の親じゃないんだよ。あたしが本当の親なんだよ」と言った。

頭の中が真っ白になった。

全く理解できなかった。

「じゃあ、本当のお父さんは誰なの」

戸籍謄本を指さしながら「この人よ」とママが答えた。

そこには見たこともない「克己」という名前が書いてあった。

「本当のパパは、なんの仕事をしてる人なの」と聞くと「実のパパは暴力団員よ。長崎にいるよ。あたしも暴力団員だったけど、足を洗ったよ」

市役所で働く新田のお父さんと、専業主婦のお母さんは、本当の親じゃなかったんだ…。

「私は誰に似ているの」と聞くと「若い時のパパそっくりよ」と言われた。

私も誰かの子供で、血のつながった人がいて、私と似ている人がこの地球上にいたんだという安心のような気持ちが溢れ、涙がこぼれた。

誰かに似ていると、生まれて初めて言われたからだ。

そういえば、顔は似てないものの、背格好はママとほぼ同じだった。

足の指の長さも同じ。

手や爪が綺麗だと言われる、私の手とママの手もよく似ている。

色白の肌も肌質もママそっくりだ。

ママの顔には私よりも沢山のそばかすがある。

ママも私もめまい持ちなのも同じ。

大のミミズ嫌いなママ、小学校までミミズを見る度にべそをかくほどミミズ嫌いだった私。

パパもママも動物とお花が大好き、私も同じ、でも新田家にそんな人はいない。

おっとりした物腰、おしゃべりなとこ、泣き虫なとこはパパに似ているらしい。

親子って沢山似てるところがあるんだね、驚いた。