それにしても、GPSには恐るべき能力がある。寄った場所、時間、滞在時間まで表示する。ずっと画面を見ていなくても過去の経路も操作次第でちゃんとわかるようになっている。

点はそのまま北区の家まで帰っていった。その日は一度近くのスーパーに買い物に出た程度で、点は止まったままだ。夜10時頃、点は享子の職場のスーパーへと動いていった。

「何だ、浮気の心配なんてないのかな?」

なんてトシカツは思った。しかし神様は意地悪なのだ、最初から落とすつもりなのに少し上に上げて安心させてから落とす。落とした時、効果、衝撃が強くなるように一度安心を与える。神様の思う壺の通り、次の日トシカツに、衝撃的な展開が訪れる。 

ついにその日が来た。享子は朝6時に仕事が終わり、点は北区の家に帰る。子供たちが出ていくまで止まっていた。午前10時、点は動き出した。

トシカツはだいたい享子の行動範囲はわかっているつもりだ。近くのスーパーか大型の薬屋に行くくらいなのだが、この日は違う方向に向かっていた。有町の実家か? いや、通り過ぎた。享子の勤めるスーパーか? 仕事か? いや、通り過ぎた。

点はどんどん浜市の街中に向かっている、北区の家から20キロも離れた住町で、点が止まった。どこだ? トシカツには想像もつかない場所だ、午前11時頃から点が止まり動かなくなる。

結局、夜までの10時間、点は動かず、動き出したのは夜9時過ぎ。そのまま点は、何もなかったかのように享子の勤めるスーパーに止まり、享子は仕事に就いた。

トシカツの脳みそがフリーズする。信じていた、だけど半面、最悪も想像していた。だけど能天気なトシカツは、最悪なことはそんなにリアルに考えていなかったし、心の準備もしていなかった。