ガルバリウム街
{僕が
ずっと住んでいる
世界がうらがえされたような
街の
その夜の遠い外れ
仄暗い照明を点している
ふるびた理容店がある}
うつむいた人影が
ちいさなあたまを
バリカンで刈っている
――――――
幻想交響曲0番
地平線のうえのピアノを
演奏する
女
くらい光として
追放された
僕
真鍮製の、幼いロマンス
青い沙漠に瞬く、小さな星達
乗り手のいない止ったままの、空中ブランコ
ぴかぴか光る、ぴすとる
梟のためだけの、聖なる森
ブリキの、快速船
砂のない、砂時計
(きっと
忘れられた埃だらけのオモチャ箱から
あらわれるのだろう)
赤茶けた兵士達が
やってきて
ぼくを
壊れた時計〈不可侵の王国〉のなかへ
つれ戻すのだ
★え、い、え、ん、の、こ、ど、も★
うつむいた人影が
ちいさなあたまを
バリカンで刈っている
僕は
くすんだガルバリウム街で
壊れた時計として存在している