エッセイ 『迷子 うつと離婚と私』 【第11回】 野沢 りん 救急車で運ばれた夫。間違えて開けた携帯には…「会いたい、愛している」 遠くからお見舞いの人は少ない。お見舞いの人がくると羨ましい。患者は嬉しいのか恥ずかしいのか誇らしいのか赤くなる。ホールの隅のテーブルで手提げ袋を受け取る。私たちは遠くから見るともなく見る。でも気になる。そのうち、一人偵察に行く。「どうやらお菓子のようだ」と報告。洗濯物の時は速やかに解散する。お菓子を頂いてもお見舞いの方が帰ると看護師さんに預けることになっていました。どうしたことか、家族のお見舞い…
小説 『オヤジのチャーハン』 【第8回】 道葉 いち 「ちょっとタバコ買ってくるわ」そう言って出ていったまま、戻って来なくなった父。捜索願を出すことになり… 「ちょっとタバコ買ってくるわ」そう言ったまま、その日、オヤジは戻って来なかった。携帯は居間のテーブルに置かれたまま。当然ながら、母親とオレは慌てた。何か事件に巻き込まれたのではないか・・・。なぜなら、ただ「タバコを買いに行った」だけのはずだったのだから。当人と連絡を取りようがないため、警察に相談した結果、捜索願を出すことになり、連絡を待つことになった。しかし、このオヤジの「失踪」は、計画的なもの…