この日、義足のことをカミングアウトしたものの、何も変わらず、彼女は、ただただ、テニスがうまくなりたい、と思っていたことがわかった。

しばらくして、

「テニスコートを予約したから行こう」

と連絡があった。一緒にテニスに行くことになった俺は、本当に義足のまま球出しをすることになったのだ。ボールを出せば、真剣に打ち返してくる。本当にテニスをしたかったんだ、とつくづく思った。

硬式テニスのボールは軟式テニスと違って、打ち方によってはホームラン級の返しとなる。彼女のテニスはずっとその状態が続くほど、ホームランテニスだった。

「押し出すように面を出してみて」

「やってみる」

さすがの運動神経で矯正してきた。そのうち、俺のそばにそれなりのスピードのボールが返ってくるようになってきた。良い位置にボールが来れば、打ち返せる。

「これはイケル!」

と思いっきり打ち返した。

「なーんだ。義足でもテニスできるじゃん」

彼女はどんどんと俺のそばにボールを返しはじめた。まさかのラリーが続くことになった。俺自身、義足だからと遠ざけてきたテニスができたことは、本当に嬉しかったし、

「義足でもできるじゃん」

と言う彼女の一言が自信になった。

球を打ち終えると、彼女は、球拾いも真剣にしていた。今考えると、何でも全力で向き合う女性だった。