小さな星
子供の頃、七タの日には短冊に願い事を書いて、天の川を見上げました。
夜空には無数の小さな星が輝いていました。
きっと、あの無数の星々から見える地球も小さな星の一つなんだろうなと思いながら。
先日、奇妙な旅行会社を見つけました。
梅雨のムッとする、景色が霞むくらい湿度の高い日の夕方に、私は渋谷駅に向かって歩いていました。
駅の周りは工事中で、私は「駅はこちら」の矢印どおりに歩いていたのですが、
だんだん人がいなくなり、不安になってきました。
そんな時、急に眩しい光の奥から現れたのが奇妙な旅行会社でした。
看板には「東京―リオデジャネイロ片道20分」などと書いてありました。
興味本意で中を覗くと、細身のスーツを着た男性が笑顔で迎えてくれました。
「あのー、面白い旅行プランありますか?」
「ええ、たくさんありますよ。例えばどのような?」
「そうですね、ふんわりした気分になれて、静かで、絶景が広がっている所に行ってみたいのですが」
男性は、すぐに、私の前に旅行パンフレットを差し出しました。
私は、あまりにも面白いそのプランに惹きつけられ、すぐに契約書にサインしました。
7月7日。
私は、船に乗って東京を出発しました。
そして、2時間後。
私の身体はフワリフワリと浮かび始めました。
宇宙船の外に出ると、無音の闇の中に、青い地球が。
私は、そっと、地球を手のひらに載せてみたくなりました。