「あー……、俺の帰る家には、変な毛色のメスネコ一匹だっていうのに」
パンを買う時、店員さんが「こちらには卵が入っていて、そちらでしたら、牛乳も卵も不使用です」と、わざわざ説明してくれた。適当に後に言われたほうを選んでみたら、どことなく嬉しそうにしていた。
朝起きてからずっと、夢を見ているような一日だったな……と俺は思う。うちに帰ると、たっぷり寝て元気を蓄えたパセリがドタバタと部屋をかけずり回っていた。俺の物が、色々散らばしてある。長時間留守にすると、腹いせにネコがよくやる、あの行動だ。
「……まったく。もろにマニュアル本の通りに動くなよなぁ~。ネコ型ロボットじゃないんだから」
たまの休みに一匹で寂しかったのは分からなくもないが。
「みやげ」
一言、キッとにらみをきかせて言い、パセリは俺の手からパンの袋をかっさらっていった。それは俺の朝飯用なんだが……。
「こら、パセリ、お前はどうせそのままじゃ食わないだろーが」
パセリはふんふんと紙袋の匂いを嗅ぐと、つまらなそうな顔をして、余っているドライフードの方へ歩いていった。