それらはおやじさんの遺品の中にあった。

「あったあった。あれ? これ何だ?」

俺の思い出の写真はおやじさんが書いた手紙も添えられて白い封筒に入っていた。手紙は奥さん宛でこう書かれていた。

『息子の奥様へ

今のお困りの状態お察しいたします。私がそこにいられればお助けいたしたのですが……色々考えるに多分そのとき私はもういないのでしょう。お役にたてず申し訳ない。そして、この度の大変不可解な息子の提案、大変驚かれ戸惑っていることと思います。

しかし、ご安心ください、華ちゃんは息子にちゃんとお世話させます。私がサポートし三日後には必ず無事にお戻しいたしますので、安心してとはいかないでしょうが腹をくくってお任せください。最後にお目にかかれたかはわかりませんが、息子と結婚してくださったこと、華ちゃんを無事産み育ててくれていること感謝いたします。息子共々ご家族の日々の幸せを願っております。

父より』

おやじさんは俺が考えるより、もっとずっとすごい人だった。俺が話したことを全部ちゃんと信じてくれて、未来でほんとうに困るであろう俺たちのためにこんな手紙まで用意していてくれた。さすがに感動して俺もホコリっぽい天井部屋で一人しばらく泣いた。過去のおれが華ちゃんと撮った古びた写真とおやじさんが添えてくれた手紙を持って帰宅した。

それを片手に奥さんに説明したんだ。八方手を尽くしたが解決策は見つからず、奥さんは泣く泣く仕事を辞めるとまで言いだしたくらい俺たちは困っていた。俺がこのことを思い出して話そうと考えたとき、奥さんはぜったいに泣いて怒って大騒ぎになるだろうと想像した。

「これ見ながら俺の話を聞いてくれ。十年前、俺は未来の俺から華ちゃんを預かったんだよ。三日間俺がちゃんとお世話をして華ちゃんは戻っていったんだ。多分、帰ってきた華ちゃんに会えるのはこれからくる試練の三日間のあとだけど。俺たちは信じて過去の俺とおやじさんに頼るしかないんだ。辛いけどわかってほしい」

簡単だった訳じゃない、奥さんにもめちゃめちゃ葛藤と疑問があっただろうが承知はしてくれた。俺が差し出した写真とおやじさんの手紙を奥さんはまじまじと見つめて、大きなため息をついた。

「よく意味がわからないけど、本当なのね……」

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