実家に着くと、家は俺が出た時のままだが、庭は花だらけになっていた。
「お兄ちゃん、おかえり!」
玄関の外で妹が待っていた。一ヶ月前の写真よりも大分大人っぽく感じる。久々に会ったせいか、軽くうろたえてしまう。
「おー、ツグミ、いつから待ってたんだ?」
「ついさっきよ。入国手続きの人から連絡がきたの」
「そうか。……無理するなよ。お前、身体弱いんだから。中で待ってりゃいいのに」
「なおゆき、早く入んなさいよ」
母親が玄関を開けた。俺が住んでいた頃とはうちの周りの景色が全く違っている。近所も半分以上が他の地区に移り住んでしまったようだ。
「親父は?」
俺はリュックとかばんを床に置いた。懐かしい廊下だ。
「あんたが帰ってくるなんて知らないから、普段通り仕事に行ってるわよ」
「お兄ちゃん、ほうじ茶でいい?」
ツグミがお茶の支度をするのを見て驚いた。俺が地球を出た時には、まだ三、四歳だったろうか……。
「ツグミ、なんか前より元気そうだな。……丈夫になったっていうか」
ツグミは嬉しそうに俺を見た。
「あんたが出かけてから、この子の体調が急に悪くなって、グリーンランドの従姉妹の家に二年間ほどお世話になったのよ。そうしたら見る見る元気になってねえ。特に何もしてないんだけど」
母親が昔から仲良くしている従姉妹の家だ。俺は電話でしか話したことがない。
「グリーンランドって、ベジタリアン地区の事か? ……移住から二、三年は忙しくて連絡もとれなかったし、地球がこんなことになってるのは全然知らなかったけど。一人で寂しかったんじゃないか? ツグミ」
「う~ん……、最初はうちに帰りたいなって思ったけど、みんな優しくて、自分の体調がどんどん良くなっていくのが分かったから。……それにね、初めの頃は毎日、家にテレビ電話をかけさせてもらってたの」
ツグミは恥ずかしそうに両手で顔を隠す。
「それじゃなおゆき、あんたもう知ってるの? 三つの地区のこと」
「ああ、大体のことは聞いた」