「……ま、まあ他にも色々あって進められなかったんだけど、自分でサンプルを取る分には構わないとも言われててね? 他の件も一段落付きそうだし、そろそろ誰か雇ってみてもいいかなーって思ってたの。そこで」
「俺が目に留まった……そういうことか」
「ええ。貴方だったら文句ないわ。それに驚かないでよ? 私が進める計画は、まだまだこれからなんだから!」
勢い込んで言うリリア。自然に声が大きくなり、続く説明にも力が入る。
マギは操手の動きに合わせて動作する。そのため身体強化の魔法を掛け合わせれば、より速く、より切れのある動きができると考えられていたのだが――
「こう言っちゃなんだけど、現行のマギは身体強化の魔法を施した操手の動きに耐える程の強度がないのよ。……え? 今更だけど色々と言ったらまずいこと話してるんじゃないかって? いいのいいの、この国のマギクラフトの間じゃ公然の秘密みたいなもんだし。そもそもこんなこと話してる時点でマズイんだから」
「……全力で自分の首を絞めてないか? もう後の祭りかもしれないが……」
「だから別にいいんだって。一応の成果はあるけど、どうせ全然進んでない計画だし。ともかく折角マギの性能を底上げする手段があるのに、それも活かせないままじゃ勿体ないって思ってね。でもまずは基本動作の確立と、それをしっかりと制御できる操手を揃えること。これをまず第一にすべきだと思ったの。基本もできない奴じゃ、強化された自分の動きも満足に制御できないだろうし」
動作のサンプルを蓄積し、蓄積したそれを行い得る技量を持った操手をまず揃える。次にそれらの操手が他の操手の指導を行い、全体の技量を底上げする――ここまでが計画の第一段階。
そして第一段階をクリアした前後で、操手達の中から特にマギの制御に優れた何人かを選抜し、身体強化の魔法を身に付けさせる。そして強化された動作に対応できるマギを彼らに与え、対魔獣用の精鋭部隊を結成する――
「これが次世代の操手とマギによる王軍の再編、及び対魔獣用精鋭部隊の創設計画……断魔騎士団計画よ!」
強大な力をもつ魔獣との戦いはこれからも続いていく。特に上位と分類されるモノとの戦いは、より一層激しいものとなるだろう。それを見越し、操手とマギの次代転換を行う――それが、「断魔騎士団計画」の概要だった。