独身男が突然子育てをすると、周りの人たちは色々な思いで見るものなんだと思った。それでも、近所のお母さんたちやおばさんもみんなが優しくて世の中捨てたもんじゃないと思えた。
華ちゃんの世話は大変だけど、その分周りの対応が優しくて本当に助かる。いつか本当に自分の子のお世話ができたらよいかもなぁなどと考えながら歩いているともう駅だった。駅にはもうおやじさんたちが来て待っていた。驚くことに、どこから借りてきたのかベビーカーまで用意してきていた。
「待たせたな、それどうしたんだよ」
「隣の山田さん家の子が使っていた物で、ちょうど処分するところだった物をワシが預かり受けたのさ。華ちゃんが使い終わったら処分するつもりだ」
嬉しそうにおやじさんはそう言った。妹はおやじさんの隣りでぶっちょう面で突っ立っていた。
「何、お前華ちゃんとみんなで動物園行くの楽しみじゃないの!?」
「あたり前じゃん、何でせっかくのお休みを父さんと兄きと他人の赤ちゃんで動物園で過ごさなきゃならないの? 意味わかんない」
そのあとの妹は動物園に着くまでずっと黙ったままだった。電車にはおれが抱っこヒモのまま乗った。おやじさんが空のベビーカーを畳んだまま持ち、ほかの荷物を全てを妹が持った。
周りから見たら、子煩悩な育メンパパとお爺ちゃんとかかあ天下の嫁みたいに見えるんだろうな。不機嫌そうな妹は一層かかあ天下の度が増すんだろうと思うと面白くて思わず吹き出しそうになるのを我慢して華ちゃんを見つめてほほ笑むだけにしておいた。