走者別打率に見る長嶋の特徴

塁上のランナーの状況でほぼ確実に打率が向上するという、長嶋が人気を博す証明がここにもある。下記、ON比較(表2)を見ていただきたい(数値は、『1979新版 プロ野球記録大観』:宇佐美徹也 講談社より)。これらの数値は、数値自身の高い低いを問うているのではない。ランナーの状況に対する打率の傾向を見ているのである。

写真を拡大 [表2]走者別打率の比較(長嶋─ 王)

もう一度表2を見ていただきたい。長嶋は④~⑦までは見事に打率が向上している。

“燃える男”と言われたのを裏付けている。王は⑥で下っている。両者ともランナーを三塁に置いたときの打率は共に0.347で高い(長嶋:810打数281安打、王:803打数279安打)。また満塁の時の打率は長嶋0.330、王0.303で高い。巨人が強かったのはこういうところからでもわかる。

他の打者を見てみよう(表3:数値は別冊宝島521号『プロ野球4番打者』宝島社2000年8月5日より)。

写真を拡大 [表3]走者別打率の比較

やはり、打率の推移は長嶋と比較すると、全員とも上下している。長嶋は④~⑦までは見事に打率が向上しているが、ここに上げた打者は、全て上下しているのである。イチローは⑦⑧番、すなわちランナーが二塁三塁にいるときは、極端に打率が落ちている。走者に三塁がいる場合(⑤~⑧)で全て3割を打っているのは王、長嶋、前田だけである。ここでもONは他の打者と違いを見せている(※王は走者を置いた場合すべて3割を打っている)。

長嶋の証明、一安打上昇ごとにチーム勝率も一割向上

次に示す表4は、長嶋の安打数とチームの勝率の関係を示したものである(数値は、『1979新版 プロ野球記録大観』:宇佐美徹也 講談社より)。残念ながら、他の打者の記録は手元にはない。たとえあったとしても、このような見事な上昇(0~3安打まで一割づつ向上)にはならないであろう。なんと、長嶋が安打1本でも打てば勝ち越しているのである。4番打者の面目躍如たるものを感じる。

写真を拡大 [表4]長嶋茂雄の1安打ごとのチームの勝率の推移