① いろいろあるけど家族には恵まれているとは思っているし、感謝もしてる。

話し合いの結果、バイクは俺と父ちゃんの共同オーナーって事に落ち着いた。ガソリン代は使用した方が最後に満タンにする。バイク本体の金は半分俺の借金。月々の小遣いといずれ社会人になったときの給料から払っていく事になった。

この日はなかなか眠れなかった。「本当にバイク買ったの?車種は?」父ちゃんに何度も同じ質問をして最後には「うるさい、いい加減にしてさっさと寝ろ。明日は店からはお前が乗って帰るんだぞ」と怒られた。

翌日、バイク店の営業開始時間が9時にもかかわらず、7時前から父ちゃんを起こし再び父ちゃんに怒鳴られた。このときの父ちゃんは口ではぶつぶつ言っていたけど、嬉しそうでもあった。

結局しつこく急かす俺に根負けして出かけた俺と父ちゃん。バイク屋に着いたときは8時にもなっていなかった。俺と父ちゃんはバイク屋の向かいにあるファミレスで開店まで時間をつぶす事にした。

モーニングセットを食べた後ふいに「そういえば、父ちゃんと2人っきりで外出っていつ以来だろ」と考えていると、どうして父ちゃんが今回の免許取得、バイク購入、俺の味方になってくれたのか不思議に思えてきた。俺には無関心だと思ってたから。

俺は父ちゃんに「母ちゃんまだ怒ってる?」って質問を入り口にしてなんで俺を応援してくれたのかを聞いてみた。父ちゃんは少し照れながら話してくれた。

父ちゃんは俺が生まれたとき、男の子って事ですげぇ嬉しかったらしい。父ちゃんは前にも書いたけど多趣味な人で、息子が生まれたらあれもやろう、これもやろうって思ってたんだって。一緒に野球、サッカー、バスケ、スポーツ観戦、釣り、キャンプ……etc.。

実際、小学生の低学年頃は父ちゃんは休みのたびに俺を誘ってよく外出していた。でも待望の息子の俺はどこに連れて行っても、何をしてもつまらなそうにしていて、すぐに「お家に帰ろうよ」と言い出す。

成長するにつれて誘っても断られるようになり、暇さえあれば部屋にこもってゲームや漫画。父ちゃんはいつしか俺を誘う事はなくなっていき、俺との会話も少なくなっていった。

何事に対しても無気力で消極的で友人も少なく、引きこもりがちな息子。そんな息子が初めて自分から;これをしたい;というアクション。しかも興味を持ったのが自分も昔から好きだったオートバイ。できる限り力になってやりたいと思ったらしい。

父ちゃんは照れているのか嬉しいのか、俺から目線を外しながら、「息子とツーリングってのは、いつか一度やってみたいと思ってる」根暗で無気力、何をしても暖簾に腕押しの息子にどうやって接したらいいかわからなかったんだろうと今になって思う。

11 俺も今2人の子供の父親だけど親子にだって相性ってあるし、親だって;親初体験;だからね。子供との付き合い方って難しいって毎日思ってる。

4 『親子にだって相性がある』じゃなくて『親子だからこそ相性がある』。

【前回の記事を読む】付き合っているはずなのに…高校時代の彼女が徐々に現した恐ろしい本性