他の数値を見ると、意外なのは「安打製造機」張本である。張本は出場試合数は3名中一番多いが、打点、本塁打は一番少ない。他の打者と比較しても多くない。一試合当たりの打点数を見ると、このメンバーでは下から二番目である。張本は本塁打を通算504本打っているが、4番打者として見た場合、やや見劣りがする。

ほかには、張本、落合は通算打率より4番打者打率が下回っている。山本浩二、山内一弘は、通算打率は3割を切っているが、4番打者打率はキチンと3割を超えている。また「シンキングベースボール」の野村は、絶対数の実績はよくぞという貫禄の数値である(ただ、王、長嶋は3番、4番を分け合っていた)。

打点が1000点を超えているのは野村、落合、長嶋、王だけである。打点が全てではないが4番打者の価値を考えるなら、その試合にどれだけ点を取ったかは大きな指標であろう。王は別格としても、長嶋のすごさがこの数値に表れている。長嶋は4位ではあるが試合数や打率、全体の数値等を考慮すれば、実質2位といってもよいのではないか。“記憶の長嶋”だけではないことは明らかである。

目立たない大記録

プロ野球の一流打者の証として、よく「打率3割」と言われる。

これは大リーグも同じだろう。しかし、必ずしも絶対的な数値とは言えないと思う。シーズンによって3割打者が異常に多いシーズンもあれば、少ないシーズンもある。またセリーグとパリーグでも、かなり人数が違うことがある。そのなかで、3割打者がシーズン終了時たった一人という年があった。一リーグ時代を含めると過去に5度ある。

表3を見ていただきたい。

写真を拡大 [表3]3割打者一人のシーズンの首位打者

改めて思うが「巨人の4番が全日本の4番」というのは伊達ではない。森永を除くと全員巨人の4番ではないか。川上、長嶋、王と、大打者の面目躍如たるものがある。

そしてここでも長嶋が目を引く。なんと2度の一人3割打者を達成しているのである。みんなが打てないときに一人気を吐く姿は、人気を博して当然と言えよう。この記録はほとんど不滅の記録と言えようか。

ちなみに、記録が出たのは全てセリーグである。当時、投手の質はセリーグの方がやや上だったのではないかと思う。また、当時セリーグの審判は低めをとる傾向があった。