鳳炎昴龍と朱雀天龍は千世達が賑やかに話しているので何だろうと近寄ると、千世は真っ赤な顔をして思わず両の手で顔を覆った。
「千世? 如何したのじゃ? 真っ赤な顔をして? 熱でもあるのか?」
「余の妃が千世殿に御子を作れとやいのやいのと言って困らせておりますぞ!」
「えっ? で、でも、余はもう五十を超えておるし…。なあ、千世よ…」
「兄上様! 励んでみられたら如何かな! フフフ!」
「朱雀天龍様までも…。私は恥ずかしいですわ!」
鳳炎昴龍と千世の二人は向かい合うとお互いに真っ赤な顔をする。
「赤龍、いい加減に下へ降ろしてくれ」
「駄目じゃ! そなたの事じゃ、また走り出すかも知れぬ! おとなしくしておれ」
幸姫は目の前で赤龍の腕の中で暴れている羅技を見て、突然お腹を抱えた。
「あ、姉上様…。お腹が痛い」
羅技達を見た幸姫は陣痛を起こし、紫龍は慌てて幸姫を館に連れて帰った。
「あれっ? 龍王様や白龍の兄上様。そして姉上様達は皆、龍王殿に帰って行かれたが? 何があったのじゃ?」
「はて? 何であろう?」
「兄上様達のせいですよ。お二人を見た幸姉上様が陣痛を起こしたのです」
青龍はそう言うと紗久弥姫を背に乗せると龍王殿に向けて帰った。
「ありゃ~! 姉上様の時も我等が驚かせてしまったからのう。またやってしまった」
赤龍は羅技を抱きかかえ、紫龍の館へ向かった。数刻が経ち、館から大きな産声が轟き、産まれたのは可愛い女の子であった。