鳳炎昴龍の館の前に在る花園では千世、幸、紗久弥姫が楽しそうに笑いながら花をたおっていた。その様子を朱雀天龍と鳳炎昴龍、青龍それと幼子を抱いた白龍と清姫は微笑んで見ていた。するとその前を騒がしく羅技と赤龍の二人が横切って追いかけっこをする。

「こらー羅技。腹の中に居るやや子に悪いぞー。その格好では身体を冷やす。ちゃんとした衣に着替えよ! それに走るな」

赤龍は、羅技の身体を気遣い注意するが羅技は言うことを聞かない。

 

「嫌じゃー。我はこの方が良い! 裾を踏んで転ぶので着たくない。転ぶとそれこそやや子に障るー」

「ああーっ。腹の中で余のやや子が壊れてしまうー」

「これ位で壊れるやや子は我の腹には居らぬ! 赤龍が五月蠅く言って追っかけるから逃げるのじゃ! フフッ! 赤龍よ! 顔が龍に変化しておるぞ! そんな怖い顔はそれこそやや子に悪いのではないかー。あはは!」

「走るなー」

「嫌じゃー」

「お願いだから走るのを止めてくれー」

【前回の記事を読む】「なりませぬ。羅技様は普通のお身体では御座いません。お腹にやや子がおられます」