「ワハハ! 天も羅技姫には勝てぬ」
龍王は大きく笑った。
「龍王様も反対されぬ! では皆様、天のおわす最上殿へ参ろうぞ」
すると、千世が赤龍にそっと声をかけ、赤龍が千世の傍に行くと、羅技は不思議そうに二人を見た。赤龍はニヤリと笑った。
「何じゃ? 赤龍? 我の顔に何か付いているのか?」
「何でもない。なあ千世殿!」
「は、はい」
千世は赤龍に、羅技姫は幸姫以上に寂しがり屋で、それを皆に気どられない様にとわざと陽気に振舞っているのだと小声でささやいていた。
赤龍は羅技を抱え上げると嬉しそうに含み笑いをした。
「そなたにはいつでも余が付いておる!」
「何だ? にやにやと……。当り前ではないか? 我はそなたの妃なのだぞ」
「フフフ! そういう意味ではない」
「放せー。恥ずかしいではないかー」
「赤龍よ。羅技姫を館へ連れて帰れ! 余達はこれより天の居られる最上殿へ上がる。あとは余に任せ! それと、明日からは地上界の視察はそなたと紫龍とで行け」
「はい! 父上様!」
「龍王様、私は大丈夫です。地上界の視察に行かせて下さい」
「駄目じゃ。身体を大切にしろ」
赤龍は羅技を背に乗せず、赤い光を出して龍体になると身体の中に羅技を取り込み、館へ帰って行った。