以下がこの観察についての私なりの推理である。

まず、箱の中の食糧が安全に手に入れられるかどうかを確認するために親が入った。外の個体はその成り行きを見つつ、親が口元からパンの匂いをまき散らしながら出てくるのをただひたすら待ってたのだ。しかしなかなか出てこない。出てくるまでは安全が確認されたとはいえないので、入ることができない。それがルールだ。

そのうち、中にあるパンをちぎっては外に撒き始めた。こんな状況はめったにあるものではない。しかし、食料を食べるには厳しいルールがあって、我先に食べてはいけないことになっているのではないだろうか。

そもそも、このパンのかけらを食べる権利は誰にあるのか? 外にいるネズミたちはお互いの顔を交互に見たのだが、誰も手を付けようとしない。食料に関するルールについて最も厳格であるはずの親が目の前にいて、どうやら、ひどく怒っている様子だからだ。

その親が、心配そうに見守っている外の子たちにパンのかけらを投げつけてくる。予想もしなかったことに、子たちは混乱しきっているというところか? 中の親は、怪しい箱の危険性を伝達する方法を考えるが、他に思いつかない。そのままただ、ひたすらパンのかけらを外に投げ続けて、2日目の朝を迎えたのではないだろうか。

実施例2 松山市内の大きな雑居ビル

市内の中心部に位置する大通商店街の一角にある大きな雑居ビルに連続捕獲具を設置した。既製の捕獲具では間に合わないほど大きい仕掛けになったので、ハツカネズミを飼育するための大きいステンレス製の金網を用いて、中に仕掛けを入れて設置した。

そこは一階がパチンコ店で、階段下には店内を清掃するための道具をしまい込む狭いスペースがあった。水道が引かれていて、水を受けるためのパンがあり、いつも水が少量たまっている。戸を開けるとひどいネズミ臭があり、壁には穴があいている。巣になりそうな物が見当たらなかったので、水飲み場として多くのネズミが利用しているようだ。

後で述べることになるのだが、この時の仕掛けはハツカネズミ用の連続捕獲具(3つ目の国内特許取得、アメリカ国内で初の特許取得)のアイデアと初めて特許を取得したアイデアを合体させて作ったものだった。捕獲されたネズミが通路を移動する際に足元の板を踏む。そうすると、ロックされていた入り口が開いて、再び他のネズミが入って来られるようになる。

満を持して作ったもので、完成させることができれば、いくらで買うのかと同業仲間に聞いたこともある。その時は本当にできたのであれば、1台10万で買うと言われ、捕らぬ狸の皮算用を早速してみた。これも楽しみの1つである。でかいネズミが入ることを考えてそれぞれのパーツを少し大きくすると、全体として今までになかったほどの大きさになった。10万円で売れるなら、1台当たり製造コストに2万円ぐらいかけても大丈夫だ。