数日後、赤龍は紫龍とともに、龍王殿に続く廊下を歩いていた。
「羅技よ! 何所に居るのだ? 綺麗な背子が手に入ったぞ。そなたに似合うと天女達も申しておる。早く姿を見せよ」
「幸姫! 白龍の兄上が白龍殿の庭に咲いている花を下されたぞ」
赤龍と紫龍は龍王殿の中庭に来ると、龍王と一緒に居る二人を見て驚いた。
「父上が幸姫を抱きかかえておるぞ……。虚ろな目をして、幸姫のあれほど色っぽい顔は見たことがない」
「羅技の腰に手を当てておる……。それに羅技のあんなに甘えた顔は! 余には見せたことがないのに……」
口々に言うと、
「龍王様の悪戯には参りました! 我の悪戯にはとても及びません」
と降参した。
「そうか! しかし、息子達の驚きぶりはとても面白かったぞ」
「こうして龍王様の傍に居ると、我は子供の頃に戻った感じが致します」
「龍王様の側に居ると何故か本当の父上様と居るみたいで、心がとても温かくて気持ちが良いですわ!」
羅技姫と幸姫は微笑み交わし、赤龍と紫龍を見つけた。
「フフフ……赤龍にやきもちを焼かせてやろうっと!」
羅技姫がいたずらっぽく笑った。
そして、羅技と幸姫は場所を入れ替わり、龍王に寄り添った。
赤龍は背子を紫龍に押し付け、真っ赤な顔をしてやって来た。
「羅技! 父上より離れよ! 余を怒らすとは……今度は尻を五度叩いてやるからな!」
「ひゃ~、五度も叩かれると歩けぬようになる~」
赤龍は、龍王の周りをくるくる回って逃げる羅技を追いかけた。幸姫は紫龍の傍に駆け寄ると、そっと寄り添った。
「ワハハー! 仲の良すぎるのも時には厄介なものよのう!」
龍王は満足そうに笑った。
その後、天上界には羅技の悲鳴とパンパンと大きく尻を叩く音が五回軽快に轟いた。