エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『刀の反り』 【第3回】 大髙 康夫 雌雄を決することができなかった竜虎と呼ばれた二人は決着をつけようと立ち合いをして… 「ほう、それはおもしろい。よし、わしが立会人になろう」師範代の宗像は興味深そうな顔で頷くと、まるで弥十郎の言葉を聞かなかったかのように竹刀を打ち合っていた門弟たちに顔を向け大声を出した。「おい、皆……稽古止めいっ! 今からこの二人が試合をするそうだ」宗像の言葉に気合もろとも打ち合っていた門弟たちは、竹刀を引いて二人の方に視線を向ける。防具を外し各々道場の隅に端座した門弟たちの前に行くと、宗像は口…