なぜか日本では人気のないEP

さて、ここでEP100、RE100、SBTの3つのイニシアチブについて、最近のわが国での加入状況を示します。それらのイニシアチブについて、2021年4月現在の宣言企業数は、下表のとおりとなります。

【図表2】日本企業のEP100宣言数

一覧して分かるように、EP100において日本企業の宣言数が他のイニシアチブと比較しても著しく少ないのです。省エネルギー・エネルギー効率化は、日本企業にとってのお家芸ではなかったでしょうか。ちなみに現在、日本企業でEP100宣言をしているのは、2018年に大和ハウス工業株式会社、同じく2018年に日本電信電話株式会社(NTT)、最近になって2020年に大東建託株式会社のたった3社のみです。

確かにRE100などと比較すると、EP100は少し内容の理解が難しいような気もしますが、それでも日本企業に人気がないのは、やはりそこには日本企業が抱えている根本的な問題や課題があるようにも感じております。わが国においてEP100の宣言企業が少ないのは、長年省エネルギー・エネルギー効率化分野に関わった筆者から見ると、日本国が辿ってきたその歴史とトラウマに似た既成概念が大いに影響しているのではないかと心配になります。

ここでも前述した京都大学教授の諸富先生が指摘された産業界側からの意見である「日本が先駆的な温暖化対策に取り組む必要がないとされた3つの理由」が思い出されます。その3つを再掲すると、

1.日本はすでに世界最高水準の排出削減技術を持っている。

2.日本は石油ショック以来、省エネに取り組んで今や「乾いた雑巾」だ。

3.日本の限界排出費用は世界最高水準、さらなる温暖化対策は成長にマイナスだ。

やはりここでも筆者が四半世紀闘ってきた「絞り切った雑巾論」が、日本企業の脱炭素経営に向けた企業・事業構造変革の障害となっているのでしょうか。

政府や企業のエネルギーに関連する方々の一般的なコメントでは、「わが国は、あるいは当社は、『徹底した省エネルギー』とともに、再生可能エネルギーの最大導入と……」というように、「徹底した省エネルギー」という言葉がある種の枕詞のように使われることにたびたび遭遇します。

その言葉を聞いた時に、いつも筆者が感じる疑問と質問は以下のようなものです。

「御社は『徹底した省エネルギー』をやっているとおっしゃいますが、具体的には省エネルギー・エネルギー効率化施策で、あるいは省エネルギー・エネルギー効率化投資をどのように徹底して進められていますか?」

「今の企業経営で、経営と現場をデータによってしっかりつないだエネルギー管理体制が構築され、御社、あるいは御社グループ全体としての『徹底した省エネルギー』が達成できていますでしょうか? 経営陣がそのことを迅速にチェックできる体制は整っているでしょうか?」

以上の2つの質問は、企業経営者に向けたもので、以下の疑問と質問は、国のエネルギー政策担当者に向けたものです。

「今の省エネ法が、また半世紀近く前のオイルショックを契機として作られた省エネ法が、その後何度か加筆修正は加えられているものの、現時点で『徹底した省エネルギー』を最終需要家である企業や個人へ強く要請するものとなっていますでしょうか?」

そして企業経営者と、政策担当者の両方に言いたいのは、次の質問です。

「省エネルギーやエネルギー効率化というのは、一度、何かしらの規制や計画等による行動や投資をすればそれで終わりではなく、地道に継続的に監視、管理、修正、計画、改善を続けていかないと『徹底した省エネルギー』の本当の効果が得られないことをご理解いただいていますか?」

国として、企業として、本気で世界をリードする、世界の模範となる脱炭素社会や脱炭素経営を目指すのであれば、上記の質問へ明確に具体的に答えてもらい、可能な限り具体的な行動へと展開していただきたい、というのが筆者の切なる願いです。