あやふやな繋がりの2人

恭子が自分とつき合っていたのは何故だったのかと、繰り返し考え込むこともあった。彼女が生きていた頃既に抱いていた疑問でもあった。唐突とは思ったが生前彼女に直接尋ねたことがある。彼女とのつき合いがもう二年半ほどになっていた頃だったと思う。どう考えても精神的なつながりとか、心が通い合っているといった実感を来栖が持てなかった時期だった。

自分としてはあやふやな気持ちでつき合って出来上がった関係だと思っているからこそ、彼女のほうではなぜつき合ってくれる気持ちになったのかと問いかけたかった。これまではあまりにまともすぎる問いと判断して避けてきた。

彼女は肉体の触れあいへと誘いかけるような言葉を発することはよくあったが、体でそのような気持ちを表そうとする色気とか、女の媚態と映るような物腰は一度も見せなかった。そのようなことは自然の流れに任せるといった態度に終始していた。二人の感情の高まりが相呼応して情熱的にセックスを望みあった時があったとは思うが、今となってはこれも来栖の独りよがりの妄想だったというような気もしてくる。

「ここにやってきて楽しいと思ってるのかな? こんな出会い方や、語らいなどで楽しい気分になってる?」

「なぜそんなこと聞くの?」

「いや、僕と会って楽しい気分になってくれているのかなとか、ちょっと疑うような気持ちになったりするものだから……はっきりいってしまうと、僕を激しく求めてくれるといったようなことがこれまであまりなかったものだし。実際のところ男女のつき合いをこれまでやってきたわけだけれど、どうも深いつき合いをしているということに確信というのかな、それが持てないものだから……」

「変なこと考えるのね。これまで誘われて拒んだりしたことなかったでしょ、おかしな人ね」

「いや、それに僕と会おうとするのも何だか毎日の習慣づけの一つと思うようにして行動しているのかなとか思ったりもするし……」

「そんなこといわれてもね、つき合いたいと思った理由なんて取り立てて何もないんだけれど……あなたの性格がいいとか、私の好みの場所に連れていってくれるからとか、そんなこともはっきり断定していえることでもないし……。実際に会って、色んなこと話しあったり、お互いを求めあったりしてきたわけだから。そんなことしているうちに離れたくなくなったわけだし、それでいいんじゃないの?」