姉妹クラブ
うちのロータリークラブには、姉妹クラブが二つある。
一つは、オーストラリアのゴールド・コーストにあるサーファーズ・パラダイスロータリークラブ。もう一つは、石川県金沢市にある金沢百万石ロータリークラブだ。
金沢のクラブとの姉妹クラブ締結のいきさつをお話ししよう。僕がクラブ幹事を務めた年度、会長のITさん(蒟蒻(こんにゃく)製造)と相談して、国内のどこかのクラブと姉妹関係を締結することを年度目標の一つにすることを決めた。どこのクラブにするかについて、僕の提案はこうだ。
当時、うちのクラブがある高崎市を通る長野新幹線は五年後に金沢まで延伸することが決まっていた。IT会長は、僕が勤めるTK大学の卒業生であり、当時はその大学の同窓会長をしていた。これまで何度か一緒に金沢の同窓会支部へ訪問した経験がある。ITさんに告げた。
「そうだ、金沢にしよう!」
当時、金沢市内には八つのクラブがあることを調べ、一緒に金沢市に出張が合うタイミングを作り、いくつかのクラブを訪問してそのなかの一つに絞ろう、との合意ができた。
その後二、三ヶ月のうちに、金沢市長のYT氏を訪ねたり、金沢商工会議所のMA会頭に会ったりしたが、各クラブの詳しい状況は分からない。僕らが気にしたのは、結婚時のお見合いのようにクラブの創立年度や会員数といった外形的なことに拘(こだわ)っていた。
話はなかなか進まない状況が続いた。少し焦り始めた頃、TK大学の古い卒業生で金沢在住の人から連絡をいただいた。一つのクラブとお見合いをすることが出来るかも知れないとその仲を取り持ってくれた。その紹介者は、自身の高崎での大学時代を懐かしがり、苦境に立たされている僕らの応援をしたいとの気持ちを持っていた。
しかも、彼の息子さんは著名な能役者として高崎でも何度か公演をしているとのことで、その関係の不思議な縁に驚くとともに、紹介してくれるというクラブに最後の望みを託した。
彼が紹介してくれたクラブは、まだ設立して一〇年くらいの「金沢百万石ロータリークラブ」だった。会員数は少ないが、ロータリー活動には非常に熱心で、姉妹クラブもすでに日本国内や韓国に数クラブを有しているから姉妹クラブ締結には理解がある、とのことだった。
早速、連絡を取り二人でそのクラブの幹部たちとお見合いをすることになった。先方から指定された金沢駅前の料亭は、その屋号がまさに「高崎屋」だった。僕らの町の名前を冠していた。二人して先方の温かい心遣いに感激するとともに、この締結の話は上手く運ぶことを確信した。
案の定、話はトントン拍子に運び、締結の日程までもが決まっていった。後日知ったことだが、当時の高崎市のMY市長は、金沢に出張するたびに「高崎屋」の屋号が気に入って、毎回食事をして帰って来るのだと話していた。