全く浮気とは、蜜の味というのか……悪いことをしている自覚はあっても、止められなかった。明日はその逢瀬の日だった。もちろん元々の彼女である静子と別れる気もなかった。いわゆるセフレというやつで、本気じゃないんだ。この習慣が始まってからというもの、優人は毎日絶好調だった。

足取り軽く、勤め先のショップが入っているショッピングモールの裏口に向かった。警備員が挨拶する。

「おはようございます」

優人は明るく挨拶を返した。

彼女の静子が働くレストランバーは、週末だけ生演奏を行っていた。たまに食べに行っていたので、スタッフとは顔見知りだった。そう言えば最近行ってないかな……。何せ浮気で忙しい。ホテルでまどろみながら優人はぼんやりと考えた。セフレの久居みどりが、シャワーから出てきた。

「そろそろ出る?」

言いながらもう服を着始めていた。

「まだ少し時間あるよ。なんか急ぎ?」

「そうじゃないけど、あんまり遅い日が多いとお母さんの機嫌が悪くなるのよ」

「ふーん……。うちはなんも言わないけどな」

「男だしね。女の子は違うのよ」

いつも自宅の風呂に入るから、と髪は洗わず、さっとシャワーを浴びるだけのみどりの身支度は早い。

「じゃあ先に帰るわ。またね」

テーブルにホテル代を半分置くと、みどりはさっさと出ていった。たまには奢ろうかと言っても、必ず割り勘にするのがみどりの希望だった。何のこだわりなのかよく分からないが、恐らく優人には恋人がいるから、罪悪感なのか、自分にあまり金をかける必要はないというセフレの意思表示とかその辺だろう。

実際みどりは彼女面することもなく、休みの日に会ってくれと要求することも、静子のことを根掘り葉掘り尋ねることもない。実にドライな関係を保っていた。会話は仕事のことが大半だし、ただ月に三、四回、仕事帰りに食事してホテルで休憩する楽な関係だ。

さて……。優人も帰り支度を始めた。

 

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