はじめに
本書は、私が経験した四つの物語をまとめたものです。
突然ですが、皆さんは「人生の生き方」って決めていますか?
「今はまだそんなこと考えられない」という人もいれば、具体的な計画を立てて歩んでいらっしゃる方もいるのかも知れません。
誰しも一度きりの人生、悔いのないようにじっくりと悩んで生きたいものですよね。
そんな自分の人生が、ある日突然幕切れしたら。
私の物語は、実はそんなところから始まったりするんです。
交通事故での命の大切さを痛感した経験、漫画家を目指して挫折と向き合った日々、そして友人との「ズレ」を通して気づいた人間関係の機微。
「命」と「創作」と「友情」─これらのテーマは一見別々のものに見えるかも知れません。しかし、振り返ってみると、すべては私という一人の人間の中で深く結び付いていました。そして、これらの経験が私を形作り、創作への情熱を育んできたのです。
「生きる」って何だろう? 「人生」ってどうあるべきなんだ?
私も慌ただしい毎日の中で、ふと考えることがあります。
答えのない問いなのかも知れない。そう思いながらも、自分の生まれてきた意味とか理由とかそういう決定的な何かにすがりたくなる時が、たまに。
だから、この本を書いたのかも知れません。
最後に添えた詩「弘法と筆とあやまり」には、私がこれまでの経験から得た創作への想いを込めています。完璧ではなくても、自分の信じた道を歩み続けることの大切さを、読者の皆さんと共有出来れば幸いです。
荻野 弘人
セカンド・バースデイ
交通事故
二〇一一年 六月二十九日。僕は宙を舞った。
その日は中学の期末試験二日目を終え、友人と勉強会と称したゲーム三昧の時間を過ごした後、「いつも通り」学習塾へと向かっていた。ただそれだけだった。
少し何か違ったとすれば、その日に限って友人の一人が遅くまで家に居たことだろうか。今思えば少し急いでいて、注意力散漫だった。
だとしても、自分自身にそんなことが降りかかるなんて露ほどにも思っていなかった。
夕闇迫る時刻、車道を挟んだ向こう側の歩道へ渡る際、一台の軽自動車を確認した。
家を出たのは夜の六時。急がなければ、学習塾の講義時間に間に合いそうになかった。
「渡れる」と確信を持った僕は、自転車のブレーキもかけず猛スピードで車道を突っ切る。
そこから記憶が途切れた。