はじめに
武家の都「鎌倉」を自らのステージとして生きた者を「鎌倉人」と呼ぶならば、私もその一人だ。私のように今に生きる者もいれば、歴史の中でこの町が最も輝きを放った中世に生き、その名を今に遺す者も数多くいる。ここではその中から何人かの「鎌倉人」を選んでその足跡をたどる。
また、この本は「人」だけではなく「場所」にもスポットをあてている。歴史に名を遺す「鎌倉人」には寺社をはじめとするゆかりの場所が必ずあるからだ。
私はずっとビジネスの世界で生きてきた。大学では経済や経営を学び、卒業後は生命保険会社で人事・マーケティング・法人営業・支社長など幅広く従事し、50歳の時に一般事業会社に転じて16年勤務、うち6年は社長も務めた。従って、歴史の専門家ではない。
しかし、鎌倉を愛し歴史を愛する私は、ここで暮らしながら寺社をはじめ鎌倉の様々な場所を訪れ、訪れれば今度はその場所にゆかりのある人物やその歴史を調べることを繰り返してきた。
つまり、文献からではなくテレビドラマの刑事のように現場を足で回ることから、情報や知識を積みあげてきた。そんな私だからこそ知りえたネタもこの本では盛り込んでいる。
また、魅力あふれる「鎌倉人」は、NHKの大河ドラマでもよく題材にされてきた。ここでは大河の中で、その「鎌倉人」やその「瞬間」がどう描かれていたかについても触れている。
更には、長年ビジネスの世界に生きてきた癖で、所々でビジネスの視点も加えている。従って、大河のファンやビジネスマンなど、多くの方々に楽しんでいただけるのではないかと思う。
私の生まれは石川県金沢市。鎌倉の生まれではない。小学校3年生の時に父親の転勤でとなりの藤沢市に引っ越し、鎌倉に住むようになったのは就職して6年目、妻子持ちとなった20代後半からである。
何だ、「鎌倉人」ではないではないかと思われるかもしれないが、実は歴史に名を遺す「鎌倉人」も多くはよそからやってきた者、後に鎌倉を去ってよそに移っていった者が多い。
代表格の「鎌倉殿」源頼朝も生まれは京都で、流人生活を送った伊豆からやってきた「鎌倉人」で、鎌倉に住むようになったのは33歳。立派なよそ者である。
まずは、興味がある「鎌倉人」、興味がある「場所」から拾い読みしていただいて、更に興味や関心が拡がれば、他のページもめくってみていただきたい。
これまでに鎌倉に来たことがあるあなたも、来たことがないあなたも、或いは私と同じように鎌倉にお住まいのあなたも、この本によってもっと鎌倉を知り歴史を知り、その魅力を感じて、より深く鎌倉を味わってみたいと思っていただければ幸いである。
