「どうしたの?」
と声を掛けると健吾は
「家で魚を食べる時には、いつもママが骨を先に除いてくれるんだ」
「そうなの、お子様みたいね」
と少しからかいながら心の中で〝この人は親離れしていない〞と思いながら、
「じゃあ、今日は貴方のお母さん役になってあげる」
と言い自分のテーブルに置かれた〝のどぐろ〞の骨をきれいに取り除いて「ハイ」と彼に渡した。
素直に「ありがとう」と言いながら一口、口に含み
「うわさには聞いていたが美味しいね」
と満足した表情で次から次へと口に含んだ。
〝のどぐろ〞を完食して店員さんが器を下げに来た後、しばらく静寂の時間が流れ、お茶を一口飲んだあと健吾がおもむろに
「二人の事を先日ママに話したんだ。一つ失敗だったのがこれまで約二年近くお付き合いしていながら両親には美代子さんの事を話題にしていなかったのだ。
だから先日、夕食時にママに事の次第を話したら、初めて聞く〝美代子さん〞の名前を聞いてびっくりしたらしく激怒して『私は認めませんよ』と言ったきり僕の言うことに耳を傾けてくれなかった。
ママは結婚に関してすごく保守的で恋愛を基本好きではないみたいで、息子の相手は親が決めるという態度だった。少し考えが古いんだよ。でも小さいときから何でもママが決めて僕はそのレールの上を歩いてきたから、今更反抗できないし」