第1章 認知症の改善のために行った工夫
6 テレビ
読んでいると毎回のように、途中に出てくる言葉「ことほぐ」の所で「『ことほぐ』ってなあに?」と聞かれました。「おめでとうございます、の丁寧な言葉だよ」と言うと、納得しました。
母親が賞状を声を出して読み終わると、いつも、棚の上に置いてある箱を母親の目の前に持っていきます。見て不思議そうに「これなあに?」と聞きます。「これが安倍総理大臣からの記念品よ」と言って、ゆっくりと、内閣総理大臣と書かれた箱のふたを開け、さらに内側にある桐の箱を開け、絹の覆いを外します。
母親はこの間ずっと、興味をもって、中身は何だろうとじっと見ています。銀杯が出てくると「まあ素敵」「どうしてこんな素敵なものを安倍ちゃんが私にくれたの」と喜びます。私は「お母さんが健康で長生きだから安倍総理大臣がご褒美にくれたんだよ」と言うと、「安倍ちゃんに何かお返ししなくちゃー」と言ったような会話がずっと続きました。
毎日のように、賞状を見せては同じ儀式のようなことをしますが、毎回、嬉しそうな顔をしてとても喜びます。最後に母親が、「大切なものだから金庫にしまっといて」と言って終わります。脳の中はとても嬉しい、いい気持ちで生き生きとなっていたと思います。認知症があるので毎日同じようなことで同じように喜びます。