すなわち、虚血性心疾患および虚血性脳血管疾患はともに、タンパク性アミン類の激烈な血管収縮・痙攣作用が、体内の一部血管に集中的に負荷されることが主原因で生じる病気なのです。

というわけで、両発作には、最終的に障害の発生する組織部位が脳あるいは心臓という極めて大きな違いは確かにありますが、実際はほんの紙一重の差異の病気であるのです。

そこで、このことを端的に示すものとして、次の事例を挙げることができます。我が国のここ数十年間にわたる疾患別死亡率の変遷を示すグラフ(図1)を見てください。

[図1]主な死因別にみた死亡率の年次推移(昭和22〜平成27年)
Trends in death rates for leading causes of death, 1947-2015 (資料:厚生労働統計協会発行『平成29年 我が国の人口動態』より)

1995年のところで心臓病死と脳卒中死のグラフの線が奇妙に折れ曲がっていることに気付かれると思います。実はこれは、この年度に死亡原因の定義に関して国際的な重大な変更があったことから生じた事象なのです。このことは、他国の統計グラフでも同様の変化を確認することができます。

すなわち、この年以前までは死亡原因として汎用されてきた「心不全」という言葉は、「心臓が不全に陥る」という心臓の状態を表す言葉であって、そもそも正式な病名ではありません。そのため、これを死亡原因名として使い続けることは不適切だということとなり、1995年度以降この言葉の死亡原因名としての使用中止が国際的に決定されたのです。