不安と確認
今井さん編
私は納得したが……あの人を触った手で私に触れてほしくない。私って嫉妬している?
「私の俊さんに触らないで」って……。
会場に入って、五組のご夫婦が席に着いていた。
挨拶をして私を紹介した。席に着いてしばらくしたら、手を握ろうとしたが私は嫌で払った。俊さん、私を見ているが無視した。私って意地悪だなぁ。ほんとは嬉しかったのに。八時三十分お開き。俊さん、手を払われないように強く握っている。
「痛いよ!」
「払わなければ、優しく握るよ」
「分かった」
優しく握っている。私は空いている手を俊さんの腕に絡めた。俊さんが私を見てほほ笑んだ。
家に着いて玄関ドアが閉まると同時に抱きしめられて激しいキス。
「息が出来ない……私、あの瞬間別れなくてはいけないと思ったの。不安で、怖くて背を向けたの」
涙が止まらない。
「ごめん、ごめんな」
お互いに強く抱きしめた。
「愛している。君だけを」
「私も……」
本当によかった。その日の夜は激しく、優しく愛しあった。
浩輔から電話。
「母さん、今月も子供達、いけない。ごめんな。保育園でお泊まり会だって」
「そう、残念、でも子供達、成長のあかしだからね。来月ね」寂しいなぁ。
それから三週間、二人でふわふわと甘い生活を過ごしていた。
裕太から電話。
「俊にぃー何している」
「ゆりとゴロゴロイチャイチャしている」
「はぁ~ん、二人で出て来てよ」
「えぇ~、気持ちいいけどな~」
「いいから、いつでも出来るでしょう」
「どうする?」
「ゆりは行きたいって」
「早く準備してよ。六時ね」
約束の場所へ着いたら裕太が来た。
六人で居酒屋に行って飲んで、食べて、笑った。
「一週間、仕事頑張れそうだ」と近藤さん。
みんな優しく微笑んでいた。
化粧室に立つためにカウンターの横を通った時、不意に男性から肩に水をかけられ、びっくりしてよろけた。
「すみません。水がかかってしまいました」拭こうとした。
「触らないで!」と拒んだ。